上下方向の脚の運動について


伸身によるターン切換及び屈身によるターン切換について

パラレルターン(小回りを含む)でターンの切換を行う時に、脚の上下動のやり方の違いで、伸身によるターン切換及び屈身によるターン切換がある。


伸身によるターン切換

左ターンまたは右ターンを行っている時(ターン前半から後半)は、脚をターン方向にひねり、脚を傾けてエッジングをするために、足首の前傾及びターン弧の大きさに応じた脚の曲げを行ってターンをコントロールする(@)。
ターン切換時は、脚を使って伸び上がる。この時足首の前傾を保つことと、腰(重心)を前に移動することを意識しないと、脚を曲げながら次のターンに入っていく時にスムーズに次のターンに移行できない(A)。
脚を再び曲げながら次のターン方向に脚をひねってターンコントロールを行う(B)。
上体の位置は脚の曲げ伸ばしに応じて上下に動く(雪面から腰の位置までの高さは、ターン時は低くなり、切換時は高くなる)。




屈身によるターン切換

ターン時(ターン前半から後半)は伸身のターンと同じで、脚をターン方向にひねれるようにするために、足首の前傾及びターン弧の大きさに応じた脚の曲げを作り、ターンコントロールを行う(C)。
ターン切換時は、ターン時よりもさらに脚を曲げる(脚を腰の方に引き上げるように曲げる)。この時、脚を曲げた分だけ上体も前の方に傾けて、脚の曲げとのバランスを取る(D)。
脚を伸ばしながら次のターン方向に脚をひねっていく(E)。
屈身のターンは雪面から腰の位置までの高さを、常に一定の高さに保つように行う(上体は上下に移動しない)。



伸身によるターン切替及び屈身によるターン切替、どちらの方が効率がいいのだろうか?
力学的に見れば屈身によるターン切換のほうが効率がよい。前にも述べたが、スキーヤーの上体は慣性の法則の影響を大きく受けるので、雪面から常に一定の高さを保とうとする。従って、伸身によるターン切換は上体が上下に移動するので、上体の高さを雪面から常に一定の高さに保つことのできる屈身によるターン切換より不安定な滑りになる。しかしながら脚の運動のしやすさから見れば伸身によるターン切換のほうがやりやすい。従ってこちらのほうが現在の基礎スキーの主流になっている。
脚を曲げたり伸ばしたりする運動の中で、脚を伸ばす運動は比較的やりやすい。従って伸身によるターン切換時(A)、及び屈身によるターン切換のターン時(CE)は比較的やりやすいと言える(ただしCEの場合は脚を伸ばす運動と同時に脚をひねる運動を行わなければならないので、脚を伸ばすだけのAの運動よりも難しい)。
脚を曲げる時、伸身のターンではターン時(@B)には下の方(重力と同じ方向)に曲げていくので、曲げるのにあまり筋力を必要としない。よって比較的やりやすいが、屈身のターンでは切換時(D)に脚を上の方(重力と逆の方向)に引き上げることになる。脚を引き上げる運動は、脚を伸ばす運動よりも筋力に負担がかかり、やりにくい。

以上のことにより運動的には伸身によるターン切換の方が、屈身によるターン切換よりもやりやすいと言える。
しかしながら雪面からの反動が返ってくる状況では、雪面がスキー板を押し上げてくれる力が働き、その力を利用して脚を引き上げてやればいいので、筋力を必要としなくなり、屈身によるターン切換がやりやすくなる。
以上のことをまとめると、低速のターンでは遠心力及び運動エネルギーが小さいので、雪面にかかる圧力も小さくなり、逆に雪面から押し返される力も弱い(作用、反作用の関係で、例えば壁を押すと、押した力と同じ大きさの逆向きの力で押し返される)。よって伸身によるターン切換のほうが向いている。
高速ターン、固い斜面、パウダースノーの深雪、こぶ斜面など雪面からの反動が大きい状況では、雪面が押し返してくる力も大きい。よって屈身によるターン切換のほうが効率が良くなる。逆に雪面が押し返してくる力が大きい状況で脚を伸ばすと、雪面が押し返す力とスキーヤーの脚によって押す力が反発しあい、弾き飛ばされることになる。

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